あれがいつもの銀縁眼鏡だったら、間違いなく死んでいた。

「だから紅夏は安心していい」

目尻を下げて彼がにっこりと笑い、私もぎこちないけれど笑えた。


落ち着いたところで、持ってきたおせちをこたつの上に並べてくれた。

「おせち……?」

お重には詰めてあったが、よく見るおせちとはちょっと違う。
海老フライに唐揚げ、ローストビーフに角煮なんかが大部分を占めている。
もちろん、黒豆にきんとん、田作りなんかも入っているが申し訳程度だ。

「あー、実家のおせちを詰めてきたからな。
姉ちゃんが煮物とか嫌いでそういうのがどうしても余るから、好きなものを作るようにしてるんだ」

〝姉ちゃん〟なんていう松岡くんが微笑ましくてつい笑ってしまう。

「なに笑ってんだよ」