「仕事しているときの紅夏、俺の声も聞こえないほど、凄い集中してるし。
あんなに真剣に書いている作品を、ただのエロ小説とか莫迦にしていいはずがない」

「松岡くん……」

これまでこんなふうに言ってくれた人は、私の周りにはいなかった。
なんだか、いままでしてきた嫌な気持ちが報われた気分。

「ごめんな、紅夏。
ほんとに。
んで、紅夏にこんな嫌がらせする奴、許せねー」

ぎゅっと松岡くんの腕に力が入り、彼が怒っているのだとうかがわせた。

「どれだけ紅夏が頑張ってるのかわからねー奴は、俺が許さねえ。
……特にこんな嫌がらせしてくる奴は」

松岡くんの声がワントーン低くなり、びくりと背中が震えてしまう。
おそるおそる見上げると、視線があっただけで瞬殺されてしまいそうな目をしていた。

今日は黒縁眼鏡でよかったと思う。