自分の行動が彼を怒らせたのだとわかるものの、なにが悪かったのかさっぱりわからない。

この間、取材を受けた『シェイクス』の記事では〝恋愛のプロ〟なんて文字が躍っていたが、私はこんなことすらわからない。
いままで自分が書いてきたものがいかに薄っぺらなものだったかわかる。

なにがこれでプロのTLノベル作家だ。

完全に自信は失っていたし、現実逃避に執筆しようとしても、一字も書けなかった。

「どうしたらいいんだろう……」

開けた引き出しの中には松岡くんから突っ返された財布が入っている。

あの日、ああなる前までは最高に幸せだったのだ。

なのになんで、こんなことになっているんだろう。

「食事の支度ができました」

「あ、はい!」

声をかけられて慌てて返事をする。
が、松岡くんはさっさと台所に戻っていった。