けれど、そこに立っているのは執事のような燕尾服をきっちりと着込み、お堅い銀縁スクエアの眼鏡をかけたオールバックの男。

まず、私が頼んだのは家政婦であって執事ではない。
それに家政婦といえば女性だと決めつけ、性別を確認しなかった私にも落ち度はあるだろう。
一美なんて名前、男性でも珍しくない。

けれど男はたとえ田辺さんが童顔若作りだったとしてもありえないほど若い。
若すぎる。
どうみても、私と同じくらいか少し上、くらいにしか見えない。

「……その。
お願いした家政婦さん、なんですよね……?」

「はい、ひだまり家政婦紹介所から来ました、松岡です」

「松岡……?」

差し出された封筒を受け取る。
ピンクのそれには下の方に、ひだまり家政婦紹介所とファンシーなイラストともに印刷してあった。
中を確認したら契約書類が入っている。
間違いなく頼んだ家政婦のようだが、名前が違う。