「そうですね……」

手際よくカートにカゴをのせて押している松岡くんは、新婚の旦那さんみたいだ。

……ということは、私はその奥さん?

思わず奇声を発しそうになって、手で抑える。

いやいや、ない、ないから。
いくらなんでもそれはない。

わかっているのに妙に嬉しくなっている自分が理解できない。

「紅夏?」

怪訝そうに松岡くんが顔をのぞき込んでくる。

「なんでもない!
そう、なんでもない」

「どこ行くんですか!?」

自分に言い聞かせてごまかすように足早に店の中を進んで行く私を、松岡くんが慌てて追ってきた。