私ってこんなに、お手軽な人間だったっけ……?


「本日はこれで失礼いたします。
また来週の月曜日に」

「はい、ご苦労様でした」

セバスチャンを抱いて玄関まで松岡くんをお見送り。

「おやすみ、紅夏。
あんまり無理するんじゃねーぞ」

少しだけ背伸びした彼の唇が、ちゅっと私の額に触れる。
この頃はそれが嬉しくて仕方ない。

「……うん、気をつけるね。
おやすみ、松岡くん」

荷物を肩に担ぎ、ひらひらと手を振って松岡くんは帰っていく。
玄関に立ったまま、自転車の音が遠ざかるまで名残惜しく聞いていた。

「また来週の月曜日」

噛みしめるようにぽそっと呟いて、玄関の鍵をかける。
セバスチャンは先導するように私の仕事部屋へと向かっていた。