「ひとりより絶対、ふたりで食べた方が美味しいよ」

「……業務規定でお客様と食事をともにすることは禁じられております」

「わかってる、けど……」

なんだか悲しくなって俯いた。
嫌なのだ、美味しいごはんを食べるのが自分ひとりなのが。

「ああっ、もう!」

いきなり松岡くんがオフモードになり、驚いて顔を上げる。
彼は髪が乱れるなどかまわずにあたまをがしがし掻いていた。

「わかった!
次から一緒に食べてやる!
そもそも、仮彼氏なんて業務規定すれすれのことやってるんだ、これくらい」

「……うん」

鼻水が落ちそうになってずびっと啜る。

「だから、これくらいで落ち込むな」

ちゅっ、頬に彼の唇が触れただけで、上機嫌になっているのがわかる。