「いつもの松岡くんも好きだけど、こっちの松岡くんも好きだな」

膝の上にセバスチャンをのせて眠っている松岡くんを微笑ましく思いながら、心臓が一回、とくんと甘く鼓動した。
いやいや、この好きは世間一般的な好きって奴で、恋愛感情の好きじゃないから。

「ん……」

ゆっくりと松岡くんの目が開いていく。
目の前に私がいるのがわからないのか、二、三度大きく瞬きした。

「す、すみません……!」

認識した途端、慌てて立ち上がろうとしてまた座り込んだ。
どうも、足が痺れていたみたいだ。

「すみません、つい、眠ってしまって……」

謝る彼の、眼鏡の弦のかかる耳は赤くなっている。
そういうところは年相応に見えて、やっぱり可愛い。

「いいよ、別に。
声をかけてくれたんだろうけど、私も集中してて気づかなかったんだもん」