松岡くんが台所の片付けをはじめ、仕事部屋に戻ったもののさっきの余波で仕事をする気にはなれない。

「松岡くんは私を殺す気なんだろうか……?」

来るたびに毎回毎回これでは身が持たない。
というか世間の女性たちはこれに耐えているのだろうか……?
それともやっぱり、私に免疫がないから?

「慣れたら平気になるのかな……?」

松岡くんの、いつもの右の口端を僅かに持ち上げる笑い方を思いだし、一瞬にして顔が熱くなる。

「あれに慣れるなんて、無理……」

誰か見る人がいるわけでもないが、それでも人に見られたくなくて、抱いたクッションに顔をうずめる。

「そもそも、松岡くんは絶対、助けに来てくれないタイプの王子様だし……」

お姫様が悪い魔法使いに攫われたといっても、自力で帰ってこいとか冷たく突き放しそうだ。

いや、それだけならいい。
悪い魔法使いと一緒になって、姫をいじめそう。