「その、あの、えっと」

空気を求めるように口をぱくぱくと開くが、まともな言葉は出てこない。

「ん?」

松岡くんの手が、私のあごを持ち上げて無理矢理視線を合わせた。
艶やかなオニキスの瞳に見つめられ、視線はその場をせわしなくうろうろする。

「なにを考えていたのかと聞いているのです。
答えによっては……お仕置き、ですよ」

唇だけを歪めてふっと薄く笑う。
途端に心臓が爆発したんじゃないかってくらいばくんと最大値で鼓動し、へなへなと彼の腕の中に倒れ込んでいた。

「紅夏!
大丈夫ですか!?」

「……もう、無理……」

こっちとしては恋愛初心者なんだから手加減してほしい……なーんて言ったら、松岡くんは聞いてくれるんだろうか……?