「ありがとうございます!」

こんな作品ダメだと突っ返されるかと思っていただけに、嬉しくてたまらない。
少しだけ、こんな作品を書こうという気にしてくれた松岡くんに感謝だ。

「今日は本当にありがとうございました」

「あ、大藤先生!」

席を立とうとしていたところを、大慌てで桃谷さんから止められた。

「その、前に言った例の、作家に対する嫌がらせ」

「捕まったんですか!?」

私に対してはいまのところなかったが、全く不安がなかったわけじゃない。

「それが……被害がピンポイントになってきてるんですよ」

申し訳なさそうに桃谷さんは肩を竦めた。
が、悪いのは犯人で彼女じゃない。

「新人賞を受賞して初めての本が出る間際の作家とか、新境地で全く別ジャンルで本が出る作家とか。
件数自体は減ってきてるんですが、なんだか不気味で」