「はい、これでいいと思います。
このまま進めていきましょう」

「ありがとうございます。
それで……」

片付けをはじめようとしていた桃谷さんの手が止まる。

「なにか気になる点でも?」

「その、……元文芸にいた桃谷さんを見込んでお願いがあって」

おずおずと鞄の中からファイルを引き出し、彼女の前に滑らせる。

「こんな作品を書いてみたいと思っているんですが……。
あ、ラズベリー文庫には向かない作品だとわかっています。
ただ、誰かの意見を聞いてみたくて。
そしたら頼める人が桃谷さんしか思いつかなかったので」

自分でも無理なお願いをしているとわかっているだけに、俯いて目を合わせずについつい早口になる。

「そうやって人付き合いが苦手な先生が、私を頼ってくださるだけでも嬉しいです。
……拝見、させていただきますね」

「……お願いします」