「見ていて微笑ましいですし、なによりバカップ……」

口もとを隠して俯いた松岡くんの肩は小刻みに震えている。

ええ、ええ、悪かったですね!
バカップルみたいで!

「失礼いたしました」

気持ちを切り替えるように松岡くんはこほんと小さく咳をしたけれど……全然失礼だとは思っていないよね?

「恋愛疑似体験なら、ああいう投稿は続けた方がそれっぽいと思いますので、是非続けてください」

「……わかった」

ただ単に、松岡くんが面白がりたいだけな気がしないでもないが、あれはあれで少し楽しかったからいいことにする。


「では、本日はこれで失礼させていただきます。
また来週、月曜日に」

「ご苦労様」

セバスチャンを抱いて玄関まで見送る。
いままで仕事部屋か茶の間から、顔を出すだけだったのに。