見上げると、じっとレンズの奥から彼が見ている。

「先ほどから私の、忍耐を試しておられるのですか」

「え……」

わけがわからない私の顔へ、松岡くんの顔が近づいてくる。
思わず目を閉じた……ものの。

「いまはこれで、我慢しておきますよ」

頬に口付けを落とし、松岡くんは私を座らせた。

「早くセバスチャンにおやつを差し上げてください。
先ほどからもう、待ちかねています」

「にゃーっ!」

私が完全に差し出すのを待たずに、セバスチャンは膝の上に前足をついておやつをぺろぺろしはじめた。

……ほ、頬にちゅーとか。

思いだすとまた、ぼふっと身体が一気に熱くなる。
もうとっくに成人を超えた人間の反応としてはおかしいのはわかっているが、こっちはいまだにキスだってまだなのだ。
慣れろっていう方が無理。