「なに言ってるのかわかってんのかよ」

立ち上がり少し怒って聞いてくるが……自分で言っておいて、いまさらだ。

「わかってる。
でもいままで彼氏とかいたことなかったし、実地で経験するのもいいと思う……から」

うんうん、きっとそれだけの理由だ。
想像の王子様に恋するよりも、実際に恋愛してみた方が経験値は上がるに決まっている。
最近、このままTLノベルを書き続けていていいのかなんていう不安もあるし、そのためだったら。

「要するに取材って奴か」

「そう、だね」

「じゃあ相手は、俺じゃなくていいんだ?」

意地悪く、松岡くんが右頬だけを歪めて笑う。

「よくない。
知らない人なんて無理。
けっこう打ち解けた松岡くんがいい」

「打ち解けた……ね」