「……それは俺のためにやってくれたのか?
だとしたら嬉しいんだけど」

バリトンボイスで囁かれ、ボン!と顔から火を噴く。

わかっていてこんな意地悪するなんて。

でも、そういうところにどきどきしている自分がいる。
黙ってしまった私の額へ、松岡くんがちゅっと口付けを落としてきて容量いっぱいになり、その場へへなへなと崩れ落ちた……。



松岡くんとはあのあと……付き合うようになった。

といっても――仮、だけど。

「じゃあ、……彼氏にする」

このときの私は、あたまがどうかしていたとしか思えない。
好きでもない男と付き合うなんて。
けれどどうしてか、松岡くんがそう言ってくれたのが嬉しかったから。

「は?」

私の言葉で松岡くんは、間抜けに目と口をぽかんと開いていた。