知り合いに自分の書いた本を買ったと言われるだけで恥ずかしいのにさらに朗読されると、恥ずかしすぎて床を破壊し、その下に潜りたくなってくる。

「知りませんでした、私が紅夏の彼氏などと」

「ひぃっ」

松岡くんの手が、するりと私の頬を撫でる。
おかげで短く、悲鳴が漏れた。

「このマーヴィンを私に見立てて、やってほしいことを書かれていたのですよね?」

「ち、ちがっ」

いや、違わない……かも。
マーヴィンのモデルは松岡くんだし。
いやいやいや、でもやってほしいとかは思っていない。

「愛していますよ、紅夏」

耳元で松岡くんに囁かれ……ぞわぞわと背筋が波立った。

「な、なにやってるの……?」

涙の浮きはじめた目でおそるおそる見上げると、艶を帯びた瞳が眼鏡の奥から私を見ていた。