「こちらこそ、ありがとうございました」

新山さんと古島さんが帰っていき、ようやく肩の荷が下りた。

――いや、まだ解決しなければいけない問題があるが。


「『シャルロット。
あなたは私の愛を疑うのですか』

マーヴィンはシャルロットを壁際に追い込み、逃げられないように壁に手をついた」

後ろからつい先日書いたばかりの作品を朗読する声が聞こえ、おそるおそる振り返る。

「『そ、そんなことは……』

眼鏡の奥からじっと見つめる、夜空の瞳が怖い。
そもそも悪いのは自分じゃなく、マーヴィンの方だ。
侍女のティルシーに言い寄られ、まんざらでもない顔をしていた。
それでなくてもこっちは執事とお嬢様と、身分差で不安があるのに」

「あ、あのね……?」