「それではお写真、お願いします」

古島さんがカメラをかまえ、ぎこちない笑顔を貼り付けた。
写真を撮られながら生きた心地がしない。

「あ、彼とのツーショットもお願いできますか?
創作のヒントはここから? って載せたいので。
顔はもちろん、わからないように加工します」

ひぃーっ、心の中で悲鳴が上がる。
松岡くんは相変わらず完璧な笑顔で、私の後ろに立った。

「申し訳ございませんが、それには了承いたしかねます。
私は紅夏だけの執事ですので。
……ねえ、紅夏?」

松岡くんは笑っていたが、誰がそんなことするか!って顔に書いてあって、私はこくこくと壊れた人形みたいに思いっきり頷いた。

「残念ですね」

新山さんの合図で古島さんがカメラをかまえるのをやめ、ほっと息をついた。

「本日はお忙しい中、ありがとうございました。
本ができあがりましたらお送りいたします」