――ぎくっ。

感心するような新山さんの声で、肩が大きく跳ねた。

「どうしてそれをご存じなんですか」

完全に作り笑顔で、松岡くんは話をあわせてきた。

「大藤先生、執事な彼氏がときどき食事を作りに来てくれるんだって、ニャンスタで自慢してるんですよ」

「へー、知りませんでした」

眼鏡の奥からちらりと私を一瞥する。
私はさっきから、身体中変な汗をかきまくっていた。
それはもう、化粧が落ちてしまうんじゃないかと心配になるほどに。

「ほら、これですよ」

私のニャンスタアカウントが表示されているであろう携帯を、新山さんは松岡くんに渡した。

私が完全に忘れていたのはこれだったのだ。

特集を組むくらいだから、エゴサくらいするだろう。
筆名でニャンスタをやっているのだから、つきとめるのは簡単だ。