ぎりぎりぼっちではなかったが、いじめられっ子に転落する境界線上にはいた。
いや、きっと、この王子様ネタ妄想体質を知られていたら、間違いなくいじめられていただろう。

ただ、この妄想体質のおかげで大学時代に出したラズベリー文庫のコンテストで賞を取り、いまでは大藤(おおふじ)雨乃(あまの)というTL小説家で食べていけている。
きっと普通に就職したところでまともに働けていけた自信もないし、妄想体質には感謝しかない。

「お待たせしましたー」

少しして戻ってきた桃谷さんは、私の目の前に一冊の雑誌を置いた。

「うちで出してる、主婦向け雑誌なんですけど。
今月ちょうど、ハウスキーパーの特集をやってるんですよ」

ぱらぱらと雑誌をめくり、すぐに該当のページが開かれる。

「週一回数時間からお願いできるみたいですし。
頼んでみたらどうですか?」

特集の中で実際に利用してみたインタービューでは、〝大満足〟とか〝早く利用すればよかったと後悔している〟などという字が躍っている。