「ろ、ロキさんがそう言うならタメ口で接します」

「そうしてくれると助かるよ」
 
部屋にあった花瓶に花を生けたロキさんは私の側に来ると、なぜかいきなり手を掴んで来た。それに気がついた私は少しぎょっとする。

「ソフィアちゃん……やっぱり君は噂通りの子だ」

「は、はあ……?」
 
噂通りの子ってどういうこと?

「やっぱり君は、今まで見てきたどの女の子たちよりも、可憐で美しい」

「か、可憐で美しい?!」
 
ロキさんが何を言いたいのか分からなかった。

私を可憐だとか美しいと思うのは、この人の目が腐っているせいなのだろうか? 

一度目の検査をしに眼科へ行くことを勧めたいところだけど、ロキさんが手を離してくれるようには見えなかった。

「俺……君の為なら命を張っても――」

「氷の玉(グラースボール)!」
 
突然、氷の玉がロキの背中に激突する。

「冷たああ!」
 
ロキさんは慌てて立ち上がり凍り付いた背中を鏡で確認する。その魔法に心辺りがあるのか扉の方を睨みつけた。

「いきなり何するんだカレン!」

「あんたが怪我人に変なことしているからでしょ?」

「お前だって怪我人だろ!」

「私はもう良いの。それに私より怒ってる人がここに居るから」

「へ……」
 
その言葉を聞いたロキさんは、一気に青ざめた表情を浮かべる。

「よ……よお~アレス。もう事後処理終わったのか?」
 
カレンさんの後ろを見るとそこには満面の笑みを浮かべたアレスが立っていた。