背の高い男は煙草をふかしながら「どこいったかしらねえか」とゆっくりなめまわすような調子で少年にきいた。

 少年は黙ったまま首を横に振った。

「息子だろ。な、知ってんだろ。たいへんなんだよ、こっちは」

 男は父と父の友人の名前をあげ、二人がどれくらい仲間に迷惑をかけたか、ネチネチとならべたてた。

「かばいたい気持ちはわかるがよ、隠しといてもためになんないぜ。きちんと出てきて、けじめをつけたほうが、おまえのおやじさんのためなんだぜ」
「べつにかばってなんかいません」
「でもよ、おまえ、連絡先ぐらいきいてるだろ。親子なんだから」
「親子なんかじゃありません」

 男は窓の外にすいかけの煙草を投げ捨て少年の顔をしげしげとながめた。

「ははあん。さてはおまえ捨てられたのか」

 男はゲラゲラ笑った。少年の肩をたたきバカ笑いした。

「そうか、そうか、捨てられたのか」