少年は銃をおろした。

 腕が鉛のように重たかった。財布の中身は千円札が二枚入っているだけだった。野球はいつのまにか終わっていて、天気予報が明日は晴れだと告げていた。

 この金でいけるところまで行こうと少年は決心した。本屋で時刻表を立ち読みし、旅行の計画をたてた。ほんとうは飛行機に乗ってみたかったが、あきらめた。金属探知機にひっかるといけないから、と自分にいいきかせた。本当は金がこころもとなかったからだ。

 二万二千円だもんな。

 女の悲しそうな顔を思い出した。

 くそっと悪態をついて頭を振って、女の顔をおいやった。もう二度と会うことのないやつだ。もう二度と。そうつぶやいた。それに、と少年は銃を握りしめて自分に言い聞かせた。

「それに、これを置いてったってことは、ああやって食いつなげ、ってことだろ」