「いい、駅についたらこれに着替えるのよ。絶対よ」

 少年はうなずいた。

「それもここにいれなさい」

 女は少年が着ている上着のポケットから拳銃と財布を取り出して紙袋の奥に隠した。

「それから、わたしを殴って」

 少年は躊躇した。

「いいからなぐって」と女は自分の顔を指さした。

「はやく、おもいっきりよ!」

 少年は殴った。女は男のそばに倒れた。

「じゃあいきなさい。いい。電車に乗る前に着替えるのよ」

 少年は走った。

 女は「なかなか気絶ってしないんだな」と小さく笑って、死んでいる男のそばで目を閉じた。

 一時間ほどたって、女は立ち上がり「ひとが死んでいます」と警察に電話した。