日が暮れるまで、少年は男の死体といっしょにうずくまっていた。

 警察がやってくるのを待った。銃声をきいた誰かが通報して、すぐにサイレンの音が近づいてくるだろうと覚悟していたが、いっこうにやってくる気配がなかった。

 男は死に際に「なんだ、チャカだったのかよ」となさけない声を出した。

 少年は拳銃を握りしめたまま、どうしてこんなことになったのだろうと考えても仕方のないことを考えた。

 拳銃なんて素直に渡せばよかったんだ。
 そんなに大切なものか?
 ひとを殺すほどのものなのか?

 スナックの女の悲しいそうな顔と死んでしまった男の薄ら笑いを交互に思い浮かべた。いつのまにか日は完全に暮れていた。薄暗い部屋で、少年は倒れている男に近づき触ってみた。ぴくりとも男は動かなかった。

 やっぱり死んでるんだ。

 男の尻ポケットから長財布がのぞいていた。ホンモノの黒革の財布だった。少年はそれをそっとぬいた。まるで男がただ眠っているだけで、起こしてしまうのを怖がっているようだった。財布には金がずっしりとつまっていた。かぞえてみると三十万ほどあった。

 こういうことなんだな。

 少年は銃を握りしめた。

 こうやって生きてけってことなんだな。