目が覚めた僕が居たのは簡易ベッドの上だった。
部屋を見渡すが特にこれと言って特徴的な物は無く、さっきまでのが夢の様に感じた。

「まさか、僕は倒れたのか?誰か助けて、くれ、た?…だよな、夢だよな」
(狐が話すとか…ははっ…まさかな)

僕はもう一度しっかりと目を覚まそうと両の頰を思い切り叩いた。

パシッパシッ

「おっし!夢だ夢!」

そう自分に言い聞かせ、ベッドから起き上がると足元にもふっと柔らかな感触があった。
(ん?んんっ?)

『なんじゃー?起きたのか?…ならコウでも
呼ぶか』
「な…なっな?!」
僕は目を疑った。さっきちゃんと目を覚ました筈なのに、何故、何故目の前にあの”狐が”いるのか?そして何故まだ声が分かるのか?
混乱で目が回りそうだった。だが、まだ夢の中だと自分に言い聞かせ何度も何度も顔を叩いた。
だが、結局目の前には”あの狐が居た”。

『この人間さんは、良く自分を叩くな?痛いのが好きなのか?』
「違っ…あ…」
僕は反射的に抗議をしてしまった。きっとこれが全ての始まりだったんだろう。今なら分かる。
『な、なんで言葉が…いや、さっき会話できて居た様に感じたのは…やはり間違いじゃなかった…』
「あ、あの…」
僕は見逃さなかった。
この狐は、あろうことか、ほくそ笑みながら言ったのだ。
”間違いじゃなかった”と

「あ、ありがとうございましたっ!僕は、ここれでっ!!」
僕は感謝もそこそこに早くこの場から離れなければと野生の勘が働き飛び出そうとしたが…遅かった…

『よし、ならばアンタに決めた!!』
「な、何を…っ!!」

急に僕の目の前は、目の前をライトで照らされた様に光前が見えないほどだった。
反射的に目を瞑った後にじわりと目を開き前を見ると夢の様に
”狐では無く綺麗な金髪の女性が立って居た”

「ようこそ、カフェユメ紡ぎへ。汝を心より歓迎しようではないか」
「いっいや、僕は帰りますっ!!」
戸口に手をかけ今にも外に逃げ出そうとする僕を綺麗な指をした金髪の女性が”ニヤリ”としながら逃すまいと僕の手をしっかりと

”握りこまれて居た”のだった。