パクパクと食べているキースの隣で、トイラは食欲なさそうにぼんやりしていた。

『ユキ ガ ツクルナラ ナンデモ オイシイ』

 あの時の言葉が耳に残り、トイラに料理を褒めてほしいと思っている自分がいた。

「トイラは、こういうの嫌いかな」

 ユキが問いかけると、トイラは我に返って慌てて食べ始めた。

「無理しなくっていいんだよ」

「いや、美味い」

 やっぱりトイラも玉ねぎには手をつけなかった。

 生の玉ねぎを嫌う人は多いけれど、フライにしたら食べてくれるかもしれないと思ってユキは工夫したつもりだった。

 ここまで避けられると、どうにかして食べさせてやりたくなる。

 でも今のトイラは、弱っているように見え、文句の一つも言えなかった。

「トイラ元気なさそうだね。放課後、ふたりでどこかへ出かけてたけど、なんかあったの?」

 「別に何もないよ」とキースがそっけなく答えた。

 それに関してふたりはわざとらしく口を閉ざす。
 食べるのに忙しいフリをして話を逸らそうとしている。

 明確な答えを得られないまま、ユキも気まずい思いを抱いて、ひとりでもくもく玉ねぎを食べていた。

 トイラたちの抱えている深刻な問題など、今のユキには分かるはずがなかった。