ふたりが家に戻れば、夕食はテーブルの上に用意されていた。

 キースがテーブルに顔を近づけ、匂いを嗅いで目を細めている。

「なんか分からないけど、こんがりと狐色で美味しそうだね」

 手を出そうとしたキースだが、振り返ったユキに睨まれて慌てて引っ込めた。

「でもなんで全部串に刺さってんの?」

「串カツっていって、肉や野菜を串に刺してパン粉つけて油で揚げる料理なの」

 初めて見るのか、キースは物珍しそうにしていた。 

 お皿の上には串に刺さった茶色いものが、形様々に並んでいた。

 キースは楽しそうに見ているが、トイラは塞ぎ込んで心ここにあらず、黙ってテーブルについていた。

 トイラの態度は気になるが、気難しさは今に始まったことではないとユキは思った。

「さあ、食べよう」

 ユキも席につき、みんなで「いただきます」とはもった。

「あっ、これ、玉ねぎでしょ」

 玉ねぎの串カツをつまみ、キースはそれをわきへと除けた。

「あー、なんで除けるの。なんでも食べなきゃだめじゃない。子供じゃあるまいし」

 ユキは避けられた玉ねぎを引き取った。

「だから玉ねぎはダメだって最初にいったでしょ。もしかしてこれユキの意地悪なの?」

「だって私は玉ねぎ好きなんだもん。オニオンリングとか大人気じゃない」

 ユキはあてつけでパクッと口に入れた。やっぱり食べてくれないのは悔しい。

「玉ねぎは食べられないけど、他のはおいしい」

 キースはポークや海老に手を出している。