「この森は様子を見ている。俺たちが何者か、この先何があるのか、ある程度読み取って静かにしているだけだ」

「それって、僕たちにとっていいことなのか、悪いことなのか、どっちなんだよ」

 キースはこの状況が理解できないでいた。

「わからない。ただ、奴にはそれが都合がいいだろう。邪魔をするものが一切ない。そして他愛無い動物たちを簡単にコントロールできる。まずは手始めにカラスを利用したわけだ。この辺りの鳥の中では一番使える動物だったんだろう」

 奴の気を感じ、かなり近くにいるような気がしてトイラは辺りを見回した。

 キースも警戒して匂いを確かめていた。

 更に森の奥へと入り、念入りに調べる。
 カサカサと落ち葉を踏み、踏んだ小枝がパキッと音を立て、ふと流れ込む風を感じていた。

 ひんやりとした空気、温度が下がって、辺りが霞みだしていく。靄がでている。

 その時、トイラの耳がピンと立ち、耳鳴りがし始めた。

 キースも空間の歪みを感じ、頭がくらっとした。

 ふたりは顔を見合わせ、最悪な状況に苦虫を噛んだような歪んだ表情を見せ合った。

「奴の力はかなり復活している。この森の時空を奴の森と繋げてしまった。くそっ!」

 トイラは悪態をついた。

「僕たちは奴の力を見くびっていたみたいだね。こんな簡単に嗅ぎつけてリンクされるなんて思わなかったよ」

 キースも悔しがった。