一方でカラスによって仕掛けられた罠は、確実に、ユキに影響を与えてしまった。

 ユキもまた迷宮の中を彷徨い始めていた。 

 暗闇の中で、恐怖と立ち向かいながらユキは出口を探していた。

 じめじめとして蒸し暑い洞窟。

 時折り頭上に落ちてくる水滴にドキッと驚かされ、ユキは岩の壁伝いにゴツゴツする石の上を歩いていた。

 ぬるっとした石の上で足をとられて、バランスを崩すたびにヒヤッとする。

 なぜ自分がこんな場所にいるのだろう。

 疑問に思いながらも、見覚えのある気もする。

 額から汗が噴きだし、それを拭えばねっとりとした感触が気持ち悪い。

 手を見つめれば、べっとりと赤黒く陰が覆っていてハッとする。

「これは汗じゃない。血だ。まさか私の?」

 意識したとたん、焼けるように腹部が熱くなってくる。
 それを確かめれば、ドクドクと血が流れていた。

 それに驚き、ユキは悲鳴を上げる。
 そして目が覚めたとき、緑の目が悲痛な思いでユキをじっと見ていた。