太陽の玉が割れたからといって、ユキの状況は何も変わらなかった。

 どんどんユキは弱っていく。

 森の破滅よりももっと恐ろしいことがトイラの目の前で起こっている。

 森をなくしてもユキだけは失いたくない。

 時間は悪意を持ってユキの胸の月の玉を満月に進めていく。

 早く決断を下さなければユキを失う。

 トイラの手足は激しく震え、急激に体が冷えていく。

 それいて、ダラダラと汗が噴出している。

 肺に空気が入らず、何度も何度も荒く息を吸っていた。

 何とかしてほしいと、トイラは藁をも掴む思いでキースに助けを求める。

「キース、助けてくれ。俺はどうしたらいい。このままユキの命の玉を取るしか方法はないのか」

 トイラはこの状況であっても迷いが生じた。

 命の玉を取っても、このままのユキを失ってしまう。

 そしてもう二度と抱きしめることもできない。

 自分の心に存在しても、この先の長い時の中、そんなユキの面影だけ抱いて耐えられるのだろうかと逡巡する。

 だが、このままではユキは確実に死んでしまう。

 何を悩んでいるんだと、助ける道がわからないのなら、もう手段は一つしかないと、言い聞かせているもう一人の自分もいた。

 そんなトイラをみてキースも躊躇する。

 助けを求められて何もできない自分に胸の潰れる思いだった。

 どうすればトイラの苦しみを和らげられるのか、それを考えたとき、そっとトイラの肩に手を置いて、ユキの命の玉をとることを肯定してやることしかできなかった。

 それが正しいかどうか聞かれたらキースもはっきり とは答えられない。

 そっと置いた手に突然力が入り、トイラの肩を強く握り締めてしまった。