暗闇でぼわっと明かりがともり、煙が立ち込める。

「ちょっと火事?」

 外に出た良子が家を振り返って気がついた。

 火の粉もどんどん派手に舞いだしている。

「おい、あいつどうなった。まだ気を失ってるのか。このままじゃやばいよ」

 柴山はまた家の中へと入っていく。

「ちょっと圭太」

 良子もこの状態をどうして良いのかわからなかった。

 とにかく消防署に電話だと、車の中に置いてあった携帯を取りに行った。

 ここ最近、いい天気が続いてたため空気はすっかり乾燥していた。

 火の回りは想像以上に早かった。

 それは森をも飲み込みそうな勢いまで燃え広がり、夜空までもが焦がす勢いに迫ってきた。

 家の中から田島亮一を柴山は担いで、外に飛び出した。

 気がついたのか、田島は目の前の轟々と音を立てるように燃える自分の家を見て、悲鳴をあげた。

「大変、山火事になっちゃうわ、これ」

 良子も迫る炎に圧倒され叫んだ。

 三人は暫く呆然と立ちすくんでいた。

 田島亮一は自分の家が燃えていく様子を見て、放心状態でただ口をぽかーんと開けていた。

「あっ、ユキちゃんと仁大丈夫かしら」

 めまぐるしく起こることに気をとられていたせいで、すっかり忘れていた良子は突然声に出した。

「トイラとキースもだよ」

 良子と柴山は無事に避難していることを願った。