「トイラ、ユキ、大丈夫か。すまない遅くなって」

 キースの登場で、安心して気が緩んだのか、トイラは崩れるように倒れてしまい、人の姿に戻っていた。

 体は全く言うことをきかなかった。

 ユキはへたりこんで、地面に手をつきながら、ゼイゼイと息をしていた。

 ジークが去ったので、胸の痛みは治まっていたが、体力をかなり消耗していた。

「私は大丈夫。トイラは怪我をしてるの」

 ユキは這ってトイラの側に寄り、横たわっているトイラの頭を持ち上げて抱きしめた。

「ごめんユキ、また苦しい思いさせて」

「ううん、あなたは命を張って、私をちゃんと守ってくれた」

 その様子を、少し離れたところで、木の陰に隠れるように仁は見ていた。

 予想もつかない展開に戦慄している。

 突然、 トイラたちの置かれている状況を、目の前で見てしまい、畏怖の念を抱いてしまった。

「一体何があったんだ。お前がジークに、ここまでやられる訳がない。それにどうしてここにミカが倒れてるんだ」

 キースはこの状況をまだ飲み込めないでいた。

 トイラはミカから貰ったクッキーに、魔物の実が入っていたこと、ジークが後ろで操っていたことを説明した。

「そっか、ミカのトイラを憎む気持ちが、ジークを引き寄せてしまったのか。この子が相手じゃ、戦うこともできないもんな」

 キースは倒れているミカを見おろしながら、人の姿に戻った。

「ユキ、胸の痣はどうなってる。また大きくなってしまったのか。すまない。俺、まだお前を救う方法がわからない」

 トイラのその苦しみは、ユキの心も軋ませる。