ミカは、人が来ない学校の裏の林へと足を向けていた。

 町の中心から離れた高校の裏手は山になっていて、竹やぶや林が学校の裏から飲み込みそうに茂っていた。

 時折、イタチや狸が顔を出すこともあり、普段はめったに人が入らない区域だった。

 ふたりは落ち葉をかさかさ踏み、時折り小枝を踏みつけパキッと折れた音を立てた。

 緩やかな坂道をミカが登れば、トイラもそのように歩いていく。

 自分の意思ではなく、体が言う事を聞かず、ミカに操られて歩いている。

 一体どういうことだ。

「ミカ、ドコヘ イク?」

「ん? とってもいいところよ」

 奥深くまで来たとき、ミカが振り向いた。

 その目はつり上がり、トイラに挑戦するような睨みを押し付けていた。

「ナ、ナンダヨ」

「トイラ、覚悟して」

 突然ミカが落ちていた太い木の枝を手にし、トイラ目掛けて襲い掛かった。

 かなり重そうであるのに、ミカはそれを軽々しく持って振り上げた。

 トイラは紙一重に咄嗟によけ、よたつく。

「ミカ、どうしたんだ」

「黙れ、ごちゃごちゃ言うな。コケにされた恨み晴らしてくれる」