「それで、それで?」

「それだけだけど?」

 キースの中途半端な情報でユキはがっかりする。

 マリから言われた言葉がまだ心に残る。

 マリと仲良く慣れたらと淡い期待を抱いていた。

「それから、五十嵐ミカ、今日トイラの悪口言ってた」

 キースはまたトイラに箸を向けた。

「えっ、五十嵐さんが、どうして。トイラのこと好きじゃなかったっけ?」

 ユキはトイラに視線を向けた。

「俺、鬱陶しくてさ、最後に露骨にミカを無視したんだよ。きっとそれでだよ」

 トイラは、悪口を言われてたと知っても、素知らぬ顔だった。

 気にせず黙々と食べ続ける。

「弄ばれて最低な男だとか言ってたな。離れてたけど、僕の耳がいいって知らないもんだから、よく聞こえたよ。目つきも怖かったな。なんか仕返ししてきそうだよ。トイラ気をつけろよ」

 キースは一応忠告する。

「あんな弱々しい女に何ができるんだ。大丈夫さ。いざとなりゃ、身をかわして逃げるよ」

 トイラはミカを軽々しく見ていたが、あまりにも警戒しないトイラに胸騒ぎを感じていた。