勢いをつけて角を曲がって走って来た仁とキースがぶつかりそうに鉢合わせた。

「ジン、ドウシタ」

 キースが近寄ろうとすれば、仁は怯えて後ずさりする。

「キース、君もトイラと同じ仲間なのか」

「ナンノ コト?」

 そこへ、血相を変えたユキが同じように現れた。ハアハアと息が切れている。

「仁、待って」

 ユキが声を掛けると仁は戸惑いを隠せない。

 感情の赴くまま、苛立った気持ちをぶつけた。

「君はトイラが、あの姿だと知って、なんとも思わないのか。しかもあんなのにキスされて」

 全部見られていた。

 仁の失望した眼差しがユキを悲しませた。

「仁、聞いて。お願い、このことは誰にも言わないで。これには訳があるの」

「訳だと? 道理で僕はトイラの前にいると、くしゃみが出たわけだ。今になってやっとわかったよ。猫アレルギーだからね、僕は」

 ふたりのやり取りを訊いていたキースが間に入った。

「仁はトイラの黒豹の姿を見てしまったのか。しかもトイラとユキのキスまで……なんてこった」

 やれやれという顔をして肩を竦めた。

「キース、君、日本語が……」

 仁はまた困惑する。

「見られたのなら、隠しても仕方がない。ついでにこれも見て」

 投げやりにキースは狼の姿を披露する。

「これでわかっただろ」

 狼の姿で喋るキースに仁は後ずさって怯んでいた。