「ねぇ、ここはトイラの専門よね」 

 ビッグ・キャッツ・ハウスと書かれた看板をユキは指差している。

 大型猫――トラ、ジャガー、ライオン、ピューマ――が一同にそこに集結していた。

 扇形のような建物の真正面のドアから入ると、目の前にはガラス越しに、それぞれ区分けされ大きな猫が一度に見渡せた。

「あっ、トイラの親戚がずらーり居る」

 ユキは友達のような気になってみていた。

「おっ、このジャガー美しいな」

 トイラが、ヒューと口笛を吹いた。

 ジャガーがトイラの方へやってくる。

 甘えた様子でガラス越しに頭をすりすりしている。

 聞こえないが、目を細めているところをみると、喉をごろごろ鳴らしているようだ。

「ヤダ!」

 ユキは思わず、トイラの腕に自分の手を回して、目の前のジャガーにふくれっ面をみせた。

 受けてたったのかジャガーはユキに向かって容赦なく威嚇する。

 シャーと牙を向けて唸っていた。

 ガラスがなければユキは襲われていたかもしれない。

「ユキ、止めろ。ジャガーと何争ってんだ」

「だって、トイラに気があるんだもん、このジャガー。トイラを取られるのヤダ」

「あのな、何考えてんだ。相手はジャガーだぞ。本気で張り合ってどうする」

 トイラは大型猫の施設からそそくさと離れた。頭を抱えて、ジャガーに本気になるユキに呆れていた。

「トイラ、待ってよ。だけどトイラ、あなたは人間の姿になれるけど、どうしてここの大きな猫たちはトイラみたいになれないの? 何が違うの?」

「俺達は特別さ、森の神に選ばれた森の守り駒だ。また違う種族なんだ」

 特別だからとそれで済ませたが、実はトイラにも良くわからなかった。

 なぜ自分は人の姿になれるのか。

 そして黒豹にもなれるのか。

 二つの存在が一つの体で表現できる。

 これの持つ意味はなんだろうと、トイラは真剣に考え出した。