校門を出たところで、仁はユキを捉まえた。

 全力速球で走ってきたため、息が切れている。

 でもユキの前では笑顔を忘れなかった。

 その屈託のない笑顔がユキには重荷だった。自分は愛想笑いもできないほど参っている。

 気分がすぐれない表情でいると仁の笑顔も消えてしまった。

「ユキ、どうしたんだい。また虐められたのか」

 ユキは首を横に振るだけで理由を言わなかった。

 言ったところでどうしようもない。

 そんな悲しげなユキの顔をみたら仁は放っておけなくなる。

 ユキが好きだという気持ちも心の中で膨れ、仁は勇気を奮い起こした。

「僕、どうしたらユキの力になれる? 僕がユキの苦しみとってやりたい。ねぇ、手を貸して」

 言われるままにユキは片方の手を力なく出した。

 すると仁はユキの手をしっかりと握った。

「えっ?」

 驚いているユキに構うことなく、仁はユキと手を繋いで一緒に歩き出した。 

「これで、君の持ってる苦しみの半分、僕が持ってあげる。だから僕に頼って欲しい。さあ、家まで送るよ」

「えっ? えっ?」

 仁がこんなにも大胆だったことがユキには驚きだった。

 それに圧倒されて払いのけるタイミングを失い、ユキはされるがまま仁に引っ張られて歩いていた。