優馬はすっと腕を伸ばし、壊れ物でも扱うような手つきで私の頬に触れた。


「俺は今までも、これからも、青(アオ)だけ見えれば、それでいい。それじゃ、ダメなのかな?」


 熱いものが身体の芯から突き上げてきて、目の奥がつんと痛くなった。何か言おうとして口を開いたけれど、何ひとつ言葉にならなかった。


 私は優馬の胸にしがみつき、わっと声を上げて泣いた。優馬は私の背中に腕を回し、ぎゅっと力強く抱きしめる。


 顔を上げると、優馬の肩越しに澄み渡った秋の空が見えた。そのとき目に映った空は、今まで見たどの空よりも、青かった。



【完】