「なんで? 優馬、どこか悪いの?」

「まぁ……うん。ちょっと、目がね……」

「目……?」

「実は俺、青い色以外、ちゃんと見えてないんだ」

「えっ……」


 心臓がドクッと音を立てて脈打った。吸い込んだ息が吐き出せなくなった。優馬は短い沈黙を挟んで続ける。


「今まで黙っててごめん。小学生の頃、この目が原因でいじめられたことがあってさ。今でもそのときのことがトラウマで、人に本当のことを話すのが怖いんだ。俺が臆病なせいで、アオを不安にさせちゃったね。本当にごめん」

「優馬……」

「俺、生まれたときから、色覚にちょっと問題があるんだ。青以外の色が全部、濁って見えるというか、くすんで見えるというか。まぁ、日常生活に支障をきたすレベルではないから大丈夫なんだけど、両親は俺の目をどうしても今年中に治したいみたいで、夏休みの間、あちこちの病院に連れて行かれてさ」