関係ない。
弘海先輩には、関係ない。
三年ぶりに再会したただの「先輩」に、関係ない。

けれど弘海先輩の返事は意外なもので


「関係なくないよ」


縋るように私を見ていた。

何言ってるんだ、この人は?
日本語が通じないのか?
確か文学部だか、教育学部だったはずだが、私の言っている意味が理解できていない?
そもそも、理解する気がない?

この場合、相手側が引き下がるのが普通だろう。
拒絶は示した。
なのに弘海先輩は更に「答えて」と催促してくる。

その瞬間、私の中で均衡を保っていた糸が、パチンと切れた。


「どうして? なんで? 関係なくないってなに? 知ってるような口聞かないで……! 私、せっかく…………なのに、どうして…………」


決壊ギリギリだった堤防は崩れ、感情が高ぶって思わず目尻から涙がこぼれ落ちる。
こんな公衆の面前で泣くつもりなんてなかったのに後から後から溢れて来て、ポロポロ流れてくる。
人前で、しかもこの人の前で泣きたくないのに。
泣き止みたいのに。

いくら手のひらで涙を拭っても、流れては止まることを知らない。