でも、それだけ。
事実、私が先輩のことについて知っていることといえば、学年とクラスと名前くらいだった。
誕生日も、住まいも、何が嫌いで何が好きかも、何1つ知らなかった。
連絡先も交換しなかったし、卒業してそれっきりだった。
弘海先輩がどこの大学に進学したのかを知ったもの、四月になって、私がそのまま高等部に上がって、進路指導室の掲示板に張り出された合格実績の欄に名前を見つけてからだった。


もう三年も時間が経ってしまったから、弘海先輩は私のことなんか、覚えているはずがないと思っていた。