「あんちゃん先生、三学期も来ようよ」


金沢さんが口を尖らせる。
三人とも私の机に群がって、「そうだ、そうだ」と小鳥のように口をそろえた。


「私も来たいのは山々なんだけど。そう言う決まりだったから」

「なんでぇ。どうせあと三ヶ月も変わんないよ」

「て言うかなんで中途半端に二学期だけなんだろ。どうせなら三学期まで雇えばいいのに」


母校の高校に臨時教諭として赴任して早三ヶ月。
一学期に不運にも事故にあって、そのリハビリに徹するという先生の代わりを探すべく二学期の臨時教諭の募集がかかり、私にそのポストが回ってきた。
大学を卒業後は兼ねてからアルバイトしていた塾にラブコールを受けて就職を決めたが、やはり教師の夢を諦めきれずに応募した。
それが採用されて二学期の間、臨時国語教師として任されたのだ。

私が受け持ったのは高校一年生だったが、突然変わった環境にも生徒たちもすぐ慣れて、私を「先生」として慕ってくれるようになった。
それがもう一週間で終わってしまうのだ。私はもちろん名残惜しく思っているものの、生徒たちもその気持ちは同じのようで、この三人の他にも連日国語ゼミを意味なく訪問して来る生徒も多い。