そう思ったら駆け出していた。
階段を駆け下り、乱暴に靴箱を開けてローファーを玄関に投げ、上履きを押し込み、かかとを踏んづけながらドアを押して校舎から逃げる。
きいちゃんが私を呼ぶ声が聞こえた気がしたけれど、無視した。
泣いてしまわないようにしっかり唇を噛んで、醜い顔を見られないように俯いて、走って校門を出る。

もうおしまいだ。
限界だ。

走って、走って、ひたすらに走って、駅に着いた。
定期をかざして改札を通って、人の合間を縫うようにして階段を降り、上がり、見慣れたプラットホームに降りる。

次の電車が来るまで、あと二分。
肩で息をしながら一歩づつ線路に向かって歩き出す。
酸欠と脱水感で意識が朦朧とする。
うまく呼吸できているかも怪しい。
人の目なんて気にならない。


だってもう、これで終わりにするから。


自分の足音がやけに耳に届いて、白線の後ろ列をなす人々の視線は画面に落ちていたり、宙を眺めたり、空を見上げていたり。
私になんて気づきやしない。むしろそれでいい。
一歩、また、一歩進んで、白線を踏む。
ようやく先頭の人が、私の奇行に気づき顔を顰める。


——ピンポーン。


アナウンスが響き渡る。


——「まもなく三番線を快速列車が通過します。白線の後ろにお下がりください——」


ガタンゴトン、ガタンゴトン。
地面が揺れて、電車の気配がする。


もうこれで終わり。
何もかも。
私の存在がいなくなれば、記憶もそのうち風化するでしょう。


中々に整理がつけずに、二度目は出来ずにいたけれど。
三週間前にはできなかったことを、今——