まだ、動悸は収まらない。
少しだけ震えていた手に、弘海先輩が気づかないことを願った。


「一位になったから、ひとつ何かいうこと聞いてくれるんじゃなかったの?」

「これはきいちゃんの作戦勝ちなので、きいちゃんの分もお願いします」

「わ、オーボーだ」

「それにしても、私結構奥の方にいたのに、すぐ探せましたね?」


目立たないように、紛れて隠れていたつもりだったのに、弘海先輩はほとんど迷いもなく私のところへやってきた。あれだけ生徒がいる中で、しかも私はほとんどフィールド内にもいなかったのに、よくネコミミに気づいたな、というのは素朴な疑問だった。

でも弘海先輩は、豆鉄砲食らったみたいな顔をした。
なんだ、その顔は。
つられて私も変な顔になる。


「それは……」


弘海先輩は何かを言いかけたけれど、お題の人を連れてきた先生たちがなだれ込むように本部に走ってきたので、続きは聞けなかった。
そこでまた二位三争いが怒涛の勢いで繰り広げられ、生徒たちの期待を背負う先生たちの意地を見た。

花純先生は結局タイムオーバーで、貢献できなかったのをクラスメイトにからかわれながらも労られていた。