「いらっしゃいませ。ああ、こむぎちゃん、久しぶり」

 失恋の日から足が遠のいてしまったpale‐greenだけど、浅木先生は変わらず笑顔で迎えてくれた。

「すみません、部長になってから余裕がなくてあまり来れなくなって……」

「そんなこと気にしなくていいよ。新部長おめでとう。お祝いに何かサービスするから、座って」

 カウンターに座ると、浅木先生はオレンジフロートをサービスしてくれた。最初にここに来た日に出してくれた、山盛りアイスのオレンジジュース。好きだと言ったのを、ずっと浅木先生は覚えてくれている。胸の内側がきゅん、と音を立てた。

 しばらく会わないようにしていたからって、好きな気持ちは急には消せないな。

「今日はずいぶん早いね。どうかしたの?」

 それもそのはず。帰りのホームルームが終わったら、すぐに全力ダッシュしてここまでやって来たのだ。扉の前で呼吸を整えるのがちょっと大変だったけれど。

 その目的は、確実にお客さんがいない時間帯に浅木先生と話をするため。オーダーや料理で、浅木先生の逃げ場を作らせないため――。

「どうしたの? こわい顔をして」

「……浅木先生」

 私のただならぬ様子を感じてか、先生はグラスを磨く手を止めて私と向き合った。