「ご、ごめんなさい、柿崎先生。私、気が動転してしまって」

「いいのよ。大好きな先輩のことだものね……。でも小鳥遊さん、あなたを心配して駆け付けてくれた子が一人いるわよ」

 先生の視線の方向に目をやると、みくりちゃんが肩で息をしながら私たちの様子を伺っていた。

「みくりちゃん……」

「こむぎちゃん……。足速すぎだよ。運動部の私でも追いつけないんだもん……」

 火事場の馬鹿力というやつだろうか。むしろ普段は走るのは苦手なんだけれど。


 授業開始のチャイムが鳴る。柿崎先生には早く教室に戻るよう言われたけれど、まだ気持ちが落ち着かなくてみくりちゃんと階段に座り込んだ。

「百瀬先輩、大事にならなくて良かったね」

「うん……」

 今回は大丈夫だったけれど、次は? また倒れるようなことがあったら? 菓子先輩の問題は何も解決していない。私はそのたびにずっと、心配して後悔して、を繰り返すの?

「みくりちゃん、前に私の力じゃどうにもならないことでも菓子先輩を助けたいのかって訊いたよね」

 いつの間にか、力いっぱい手のひらを握りしめていた。噛みしめた唇もじんじん痛む。

「うん」

 みくりちゃんが心配そうに私を見ている。