十月。秋晴れの良き日に、浅木先生と柿崎先生は結婚式を挙げた。
 身内だけのこぢんまりとした式だったようで、私たちは参列はできなかったのだが、あとから写真をたくさん見せてもらった。お腹に負担をかけないようなふわっとしたウエディングドレスを着た柿崎先生はすごく綺麗で、白いフロックコートを着た浅木先生は本物の王子さまみたいだった。

 本当に、お似合いの夫婦。柿崎先生は産休に入るまで、旧姓のまま仕事するらしい。元気な赤ちゃんを産んで欲しいなと思う。


 菓子先輩が部活を引退してからひとつの季節が過ぎ、もうすぐ冬休みになる。最初のうちは活動日にちょくちょく顔を出していた菓子先輩も、受験戦争本番の十二月になるとまったく調理室を訪れなくなった。

 少し寂しいが、その頃には私も菓子先輩のいない生活に慣れ、移動教室の時に遠くで先輩を見かけても、以前のように泣きたい気持ちになることもなくなった。

 菓子先輩がいなくなっても私の高校生活は続くのだから、ちゃんと一人でも大丈夫にならないといけない。名前だけだけど調理部の部長もまかされ、自信もついてきたころ。


 今までの高校生活を揺るがすような、大きな出来事に私は直面することになる。