「も、もちろん……! ありがとう、すごく嬉しい」

 勇気を出して今まで言えなかった言葉を伝えると、目の前の子――御厨(みくりや)さんは驚いた顔をして、

「小鳥遊さん、かわいいっ」

 私を抱き締めた。

「えっ、えっ!?」

 突然のことにびっくりしていると、

「みくりちゃん、良かったね、願いがかなって」

「小鳥遊さんと仲良くしたいって、入学式からずっと言ってたもんね」

 御厨さんの仲良しの子たちが、お弁当を持って周りに集まってくる。

「えっ、そうだったの?」

「うん。だって小鳥遊さん、ミステリアスなところが気まぐれな猫みたいでかわいくて。話しかけてもそっけないから、嫌われてるのかなって思ってたんだけど……」

「そんなことない! すごく嬉しかったのに、私人見知りで緊張してて、いつもうまく話せなくて……ごめんね」

「そうだったんだ。じゃあ先輩に感謝しないとだね! こうやってきっかけをくれたんだもん」

「ねえねえ、早くお弁当食べようよ~。おいしそうな匂いでもう、お腹がなりそう」

 みんなが周りの机をくっつけ始めた。どうしよう、こんなに嬉しいお昼休みは人生はじめて。

「小鳥遊さん、なんか目が赤くない?」

「えっと、スパイスの香りが目にしみてっ」

 あったかいスープカレーとみんなの笑顔。楽しいおしゃべり。今日のお弁当の味を、きっと私は一生忘れない。


 放課後になったらすぐに調理室に行って、菓子先輩に今までのお礼を言おう。今日のスープカレーの感想と、友達ができたこと。そして料理部に入りたいということ。

 先輩はどんな顔してくれるかな。お母さんが子どもをほめるときみたいな笑顔で、「こむぎちゃん、料理部にようこそ」って、言ってくれるかな。